過敏性腸症候群とは?原因や治療法、食事療法などを解説
作成日:2022年4月7日
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過敏性腸症候群とは、腹痛や便秘、下痢などが慢性的に繰り返される病気のことであり、約10~20%の人がこの病気であると言われています。
過敏性腸症候群は、命に関わる病気ではありませんが、腹痛や排便異常によって日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
このページでは、過敏性腸症候群の原因や治療法、食事療法などについて解説します。
過敏性腸症候群とは?
腸は食べたものを消化し、便として排出するために、蠕動運動という腸管の収縮によって内容物を肛門側へ押し出す運動を行っています。
この運動は自律神経によってコントロールされています。
また、腸内には変化を感じ取る知覚機能が備えられています。ストレスなどにより自律神経のバランスが乱れると、腸の蠕動運動は激しくなり、痛みを感じやすい状態になります。
この状態が過敏性腸症候群であり、健康な人では腹痛を感じない程度の弱い刺激にも反応して腹痛が生じやすくなります。
過敏性腸症候群の主な症状は便秘、下痢、腹痛、食欲不振、ガスが多く出る、吐き気や嘔吐などです。
ストレスが主な原因となるため、真面目な人や内向的な性格の人は過敏性腸症候群を起こしやすいと言われています。
また、過労や睡眠不足、不規則な食生活などによっても身体はストレスを感じ、腸の蠕動運動に変化が生じることがあります。
腸の運動が異常に活発化すると下痢が生じ、反対に運動が鈍くなると便秘が引き起こされます。
過敏性腸症候群になると、プレッシャーやストレスを感じた時に「また起こるかもしれない」という不安な気持ちが生じ、その不安によって症状が引き起こされるという悪循環に陥り、長期間症状に悩まされることもあります。
過敏性腸症候群の便通異常のタイプ
過敏性腸症候群では、便秘がちになる人から下痢を起こしやすくする人まで様々なタイプがあり、便の形状と頻度から「便秘型」と「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」の4つに分けられます。
便秘型の患者はストレスを感じると便秘がひどくなり、お腹の張りや不快感、ガスが出やすいなどの症状がみられます。
下痢型では突然起こる下痢が特徴です。腹痛を伴うこともあります。混合型では便秘と下痢を繰り返し、便通が変動しやすくなります。
いずれのタイプもストレスを感じると症状が悪化し、排便すると症状が改善します。
男性では下痢型、女性では便秘型が多いと言われています。
過敏性腸症候群の診断基準
過敏性腸症候群の診断には、国際的に用いられているローマⅢ基準が使われます。
また、確定診断を下すために、大腸がんや炎症性腸疾患などがないか検査する必要があります。
・直近3か月間で、月に3日以上にわたり、腹痛や腹部不快感が繰り返し起こっており、下記の特徴が2項目以上当てはまる場合。
(1)排便によって症状が緩和する。
(2)症状とともに排便回数が増えたり、減ったりする。
(3)症状とトンに便の形状が柔らかくなったり、硬くなったりする。
過敏性腸症候群の治療とは?
過敏性腸症候群の治療の基本は生活習慣の改善です。
生活習慣を改善しても症状がよくならない場合は、薬物治療が選択されます。
使用する薬は、腸の運動を抑える薬や、身体にとって有用な菌(ビフィズス菌や乳酸菌など)の製剤、水分を吸収して便の水分バランスを調整する薬などです。
また、便秘型や下痢型など症状のタイプに応じて下剤や止痢薬などが使用されます。
また、日常生活にストレスがある状態だと、症状の悪化や再発を繰り返しやすくなります。
ストレスの影響が強い時や気持ちが不安定な時は心療内科を受診することも大切です。
過敏性腸症候群の治療に必要な生活習慣の改善とは?
・栄養バランスの良い食事を、3食規則正しい時間に食べる。
便通の乱れを避けるため、暴飲暴食せずに3食規則的に食べるようにしましょう。
・睡眠、休養をしっかりとる。
過敏性腸症候群の改善、悪化を予防するためには睡眠時間の確保と適度な休養が必要です。
・ストレスをためこまないようにする。
ストレスは過敏性腸症候群の症状を悪化させることが分かっています。
自分に合った方法でストレスを発散するよう心掛けましょう。
・禁煙する。
タバコに含まれるニコチンは症状を悪化させる原因となります。
・適度な運動を行う。
ストレッチやウォーキング、散歩などの軽い運動は腸の働きを正常に整える効果が期待できます。
過敏性腸症候群の食事療法とは?
・ゆっくりよく噛んで食べる。
よく噛むと消化や吸収が良くなります。
・食事はバランスよく、消化吸収がしやすいものを中心に摂取する
腸に負担をかけないよう、消化が良いものを摂取するようにしましょう。
・カフェインを控える。
大腸の運動を刺激し、症状を悪化させるおそれがあるため、カフェインを多く含む飲料(コーヒーやエナジードリンクなど)は飲み過ぎないようにしましょう。
・アルコールは控える。
アルコールは腸を刺激するため、症状がある時は控えましょう。
また、アルコールを摂取することで食べ過ぎたり、下痢をしやすくなったりします。
炭酸を含むものだとお腹が張りやすくなります。
・食物繊維の多い食事を摂る。
野菜、海藻類、玄米、雑穀などを食事に多く取り入れ、食物繊維を積極的に摂取するようにしましょう。
ただし、ごぼうや切干大根、ブロッコリーなどの不溶性食物繊維を摂り過ぎると下痢やお腹の張りなどの症状が出やすくなるため、注意が必要です。
・FODMAPを多く含む食品を避ける。
FODMAPとは特定の糖類をまとめた呼び名であり、オリゴ糖や二糖類。単糖類などが含まれます。
これらは大腸で分解されることでガスを発生させます。
また、腸内に水分をひき込む性質があるため、FODMAPが多い食品を摂ると、ガスが出やすくなったり、お腹が張りやすくなったりします。
欧米ではFODMAPを多く含む食品を避けることで、過敏性腸症候群の症状が軽減することが報告されています。
原因となる食品には個人差があるため、栄養バランスの良い食事を基本に、お腹の調子が悪い時の食事内容を見直してみましょう。
FODMAPを多く含む食品の一例 | |
オリゴ糖 | 小麦、玉ネギ、にんにく、大豆、ひよこ豆などの豆類など |
二糖類 | 牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど |
単糖類 | はちみつ、りんご、もも、すいかなど |
ポリオール | 人工甘味料、きのこ類、カリフラワーなど |
※FODMAPが少ない食品の一例
バナナ、人参、じゃがいも、米、豆腐など
・過度の刺激となるものは避ける。
香辛料や濃すぎる味付けのものは腸に負担がかかります。
・脂質の多い食品を避ける。
脂質は脂肪酸に分解され、腸を刺激します。
・冷たいものは避ける。
氷の入った飲み物、アイスクリームなど冷たすぎるものは避けましょう。
まとめ
過敏性腸症候群の発症・悪化を予防するためには、ストレスを緩和することと生活習慣の改善が必要です。
避けられるストレスであれば、避ける方法を考え、避けられないストレスであれば発散する方法を考え、症状と上手に付き合っていきましょう。
生活習慣を改善する上で最も大切なのは食生活です。
3食規則正しく、栄養バランスの良い食事を摂るよう心掛けましょう。
毎日健康に配慮した食事の献立を考え、調理するのが難しい、という方は配食サービスの利用がおすすめです。
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