眠い…「春眠暁を覚えず」春の眠気について
作成日:2022年4月6日
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「春眠暁を覚えず」これは中国唐代の詩人である孟浩然(もう・こうねん)の「春暁(しゅんぎょう)」という漢詩の冒頭部分です。
「春の夜は寝心地がよく、夜が明けたのにも気づかずに眠り込んで目が覚めない」といった意味です。
春は朝すっきりと目覚めない、日中に眠くなる、などと感じる人が多くなる季節です。春の夜は本当に寝心地が良いのでしょうか。
春の眠気について
寒さが和らぎ快適に眠れるイメージの春ですが、なかなか寝付けない、朝すっきりと起きられない、よく眠ったのに日中眠くなるなど、実は睡眠の不調が起こりやすい季節です。
春に睡眠の不調が起こる要因
・寒暖差
春は、低気圧と高気圧が交互に日本付近を通過するため数日の周期で天気が変わり、気温が大きく変動します。
夜眠るときと朝の気温が大きく変化することで寝具の調節も難しく、睡眠の質が低下しやすいといえます。
・生活環境の変化
春は入学や進学、入社や転勤など環境の変化や、慣れない人たちとかかわる機会が多くなるなど、心身のストレスが大きくなる季節です。
日中の不安やプレッシャーなどがストレスとなって、睡眠の質が低下することもあります。
・花粉症
花粉症の症状によって寝苦しかったり、薬の影響によって日中に眠くなる、朝すっきりと目覚めないなどの悪影響が出ることがあります。
春に眠い理由は
・体内時計のずれ
体内時計のマスター時計は、脳の視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分にあり、光刺激とメラトニンが連動して睡眠と覚醒をコントロールしています。
夜になって暗くなると松果体からメラトニンというホルモンが分泌されることで眠気が生じ、朝の光を浴びるとメラトニンの血中濃度が下がって交感神経が優位となります。
人の体内時計は24時間より少し長くなっていますが、朝の光を浴びることで体内時計がリセットされます。
春は徐々に日照時間が増え、日の出・日の入り時刻も変化しているため、体内時計がずれてしまうと考えられます。
・自律神経の乱れ
自律神経の中枢も視床下部にあり、体内時計と連動しています。
春の朝にすっきりと目覚めないのは、春の気候や環境の変化などによって自律神経のバランスが崩れ、副交感神経から交感神経への切り替えがうまくいかないのが原因と考えられます。
春の快適な睡眠のために
ぽかぽかと穏やかな春を気持ちよく過ごすためにも、質の良い睡眠は欠かせません。
快適な睡眠のために、できることを試してみましょう。
朝・夜の過ごし方
朝はできるだけ同じ時間に起きるようにしましょう。
目が覚めたらカーテンを開けて日の光を部屋に入れます。早朝に起きるときや天気が悪い日は、部屋の電気をつけましょう。
夜はできるだけパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の使用は少なくし、眠る2時間前までにしましょう。
自律神経を整えるためにはシャワーではなくぬるめのお湯にゆっくりと入るのがポイントです。
寝具を調整する
朝晩でも気温差がある春は、薄手のかけ布団を数枚使うと、体温の調節がしやすくなります。
特に薄手の羽毛布団は軽いので、1枚あると重ねてかけるときに重宝します。
また花粉症の症状が重い人は、寝具に花粉がつかないようにすることも大切です。
布団カバーやまくらカバーにも、花粉がつきにくい素材で作られたものがあるので、使用してみてもよいでしょう。
香りを活用する
夜はリラックス効果のあるラベンダーやベルガモット、スイートマジョラム、ネロリなどの香りが質の良い睡眠のために役立ちます。
コットンやティッシュペーパーなどにアロマオイルを数滴しみ込ませて枕元に置いたり、アロマオイルを数滴垂らした湯船に入るのもよいでしょう。
朝の寝覚めが悪いときには、ベッドサイドに覚醒効果のあるローズマリーの香りのルームスプレーをおいておき、目覚めにスプレーをしてみましょう。
良い眠りのために役立つ栄養や成分
・トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつであり、神経伝達物質であるセロトニンの原料になります。
セロトニンには鎮静作用や睡眠導入作用がありますが、さらにメラトニンに変換されて体内時計の調整をしたり、睡眠のサイクルを整える効果があります。
トリプトファンは体内では産生できないため食品から摂る必要があり、トリプトファンからセロトニンを合成するときにはビタミンB6が不可欠です。
トリプトファンは牛乳・乳製品、大豆製品やナッツ類に多く含まれており、ビタミンB6はマグロやにんにく、バナナやトマトに多く含まれています。
・グリシン
グリシンはアミノ酸の一種で、睡眠の質を改善する効果があるといわれています。
グリシンの摂取により徐派睡眠やレム睡眠に到達するまでの時間が短縮し、またグリシンの摂取によって末梢の血流量が増加して手足からの熱放散が促進するため、深部体温を速やかに下げることで深い睡眠がとれると考えられています。
グリシンは牛すじや鶏の軟骨、豚足などに多く含まれています。
・GABA
GABAはγ-アミノ酪酸というアミノ酸の一種です。GABAの摂取によってノンレム睡眠の時間が増加し、すっきりと目覚める効果が期待できます。
トマトや発芽玄米に多く含まれるほか、GABAを摂取することができるチョコレートなども商品化されています。
・マグネシウム
マグネシウムはメラトニンのほかレニンという睡眠にかかわるホルモンの働きにかかわっており、神経系を鎮めたり筋肉をリラックスさせる効果があります。
さらに体内のGABAを維持する働きもあります。マグネシウムは発芽玄米やライムギなどの穀類、昆布やわかめ、ひじきなどの海藻に多く含まれています。
良い眠りのための食事の取り方
・1日3食食べる
できるだけ同じ時間に1日3食の食事を摂ることは、自律神経のバランスを整えるために役立ちます。
特に明るい環境で朝食を摂ることは、体内時計をリセットして起床と睡眠のリズムを整える効果があります。
できるだけ起床してから1時間以内に朝食を摂るようにしましょう。
夕食は眠りにつく3時間前までには済ませ、仕事などで夕食の時間が遅くなるような場合は夕方のうちに軽食を摂っておき、帰宅後は消化のよい炭水化物の食品を少量摂るようにするとよいでしょう。
・朝食にトリプトファン、夕食にグリシンを摂る
必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンを含む食品は、朝食に摂ることで夜の睡眠の質を高めることができます。
さらにアミノ酸の一種であるグリシンを夕食に摂ることで、体内時計を調整し、朝の目覚めをよくする効果が期待できます。
・寝酒はやめる
アルコールは寝つきをよくする効果はありますが、眠りは浅く、途中で目が覚めやすいことがあります。
アルコールの代謝は個人差が大きく適量は人によって異なりますが、夕食と一緒に、ほどほどの量を心がけましょう。
寝酒の習慣はアルコール依存症のリスクも高いので、やめるようにしましょう。
・午後のお茶の種類に気をつける
コーヒーや紅茶、緑茶にもカフェインは含まれており、カフェインには興奮作用があります。
カフェインの作用は体内に吸収されてから約30分後に発揮され、約3時間後に効果が最大になるといわれます。
カフェインの代謝は個人差が大きいのですが、作用が消失するまでには5~7時間かかるといわれています。
カフェインの作用が強く出やすいと感じる人の場合、夕食後に飲むお茶は、麦茶やルイボスティー、ハーブティーの他、カフェインレスのコーヒーや紅茶などを利用するとよいでしょう。
まとめ
春は寒さが和らぐことで睡眠環境が良くなると思われがちですが、実は睡眠トラブルが起こりやすい季節です。
春の睡眠トラブルの主な原因は体内時計のずれと、自律神経の乱れです。
規則的な生活や工夫によって改善できるので、できることから始めてみましょう。
食事は体内時計や自律神経のバランスを整えるために重要な働きがあり、質の良い睡眠のために役立つ栄養素もあります。
睡眠に不調を感じたら、お食事の内容も見直してみましょう。
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